2019年11月19日火曜日

FENNESZ『ENDLESS SUMMER』

案外、時の風雪に耐えたな、というのが正直な印象です。時間というのは本当にヤスリみたいなもので、芸術作品をゴリゴリ削っていきます。



全然期待していなかったのですが今聴いても本当に良いです。

例えば。などと列挙するのは作品とそのファンに失礼ではあるのですが...マグネットの『ON YOUR SIDE』。2003年くらいのリリースかしら。リリース時はなんだかいい雰囲気だな、と思っていたんですが2019年に聞いたら退屈なんです。聴きすぎた可能性もあるんですけどね。NINの『FRAGILE』なんか狂ったように聞いて、副作用でその後の作品に真面目に向き合えなくなったんですけど笑、今聴いたら大丈夫なんでしょうか。

はてさて本作。エレクトロニカがノスタルジックに鳴る、ある意味では発明とも言える作品ではないでしょうか

これに関して、「(当時の)現代人にとって電子音の方が生音より身近でむしろノスタルジーを喚起するのだ」、ということも出来るんですけど、それよりも「音による演出の仕方の妙」、です。メロディを覆うような柔らかなノイズがちょうど「記憶の遠さ」を上手に表現していると思います。おぼろげな少年時代の記憶を辿るような甘酸っぱい感覚を丁寧に描いています。

リリースは2001年。エレクトロニカの当たり年、らしい。

実験音楽、電子音響の牙城・[Mego]からのリリース。

その後のエレクトロニカのフォーキーテイスト導入の先鞭をつけた作品です。

冒頭のアブストラクトな音の配置からアコースティックギターのサウンドにハッとさせられるタイトルトラックへの流れが秀逸。


いいっすね"Endless Summer"!ロマンチックでスイートでノスタルジック、なんだけど適度にスリリングな展開。麗しいです。

都会的であり、牧歌的でもある不思議な感触。優しいようでいてとことん孤独な音楽でもあります。

当時、あらゆる人がこの作品を年間ベストに挙げていた、と思います。なんか強迫観念じゃないけど、これを挙げざるを得ないというか。僕も当時はそう思いました。今となってはなんでそう思ったのかうまく思い出せないんですけど、それでもこの作品は今もひっそりと名作であり続けています。

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