一所懸命に書きましたが読み返すと自分のまとめる能力のなさがありありと伝わってきます。
あの、これ、ほんとはスゴくいい本なんです…。
為末大さんの『諦める力』を読みました。多分良い本だろうと思っていましたが、やはりとても良い本でした。
これはもう、中学2年の教科書にしていいと思います。進路を選ぶ前に読んで欲しいです。僕は自分の息子がそれくらいになったら読ませたいと思っています。「"諦める"なんてネガティヴなタイトルの本を父親から渡されるってどうよ!?」とも思いますが、説明したらわかるように育てたいです。
無理だと思ったら早めに見切りをつけて別のことをした方が良い。というと不真面目に聞こえたり、それこそ努力が足りないと言われそうです。
それに対し本書は長く現役生活を続けたものの大成せず、社会経験がないまま就職するにも歳を取ってしまって現在非常に苦しい生活を強いられている元アスリートに言及しています。応援してくれる人たちが選手生活後の世話をしてくれるわけではない、という部分はぞくっとしました。たしかにそらそうです。
努力を続けることと決断を先延ばしにすることを混同してはいけません。特に「今までの積み重ねが…」、「せっかくここまでやったのに」などとつい思ってしまいますが、時間が経てば経つほど自分の選択肢は狭まっていくのです。
「諦めるには早い」、「努力すればいつか夢は叶う」。美しい言葉は時に残酷です。
そして人生は幾通りもの選択が可能だがその中の一つしか選ぶことは出来ない。
もちろんこの選択は非常に難しいものです。「最終的に自分はどうありたいのか」という目標(戦略)が明確でないと、「目標を達成するためにどうするか」という戦術を選ぶことは出来ません。
本書を読んで強く思ったのはここ、「明確な最終目標を持つことがとても大切だ」ということです。最終目標さえはっきりしていれば諦めて、別の方法をとることが出来ます。
為末さんも陸上の花形である100mから(それに比べれば地味な)400mハードルへ転向することに抵抗があったそうです。
しかし彼はそこで100でなければいけないのか、100で勝たなければ陸上をやる意味がないのか、そもそもなぜ陸上をやっているのかを問います。問い続けて根元まで問い直す。それはまさに哲学です。
陸上をやるのは世界一になるためだ、なぜ一番かというと、それを実現させた日本人がいないからだ、なぜ実現させたいかというと、世の中にインパクトを与えたいからだ。
では世間を驚かすためには100でなければいけないだろうか、種目にこだわるよりも勝つことを優先させるべきではないだろうか、だとしたら100よりは400の方が世界中になる可能性は高いのではないか。
問い、考えたすえに、100の金メダルも400の金メダルも同等の価値があるとの結論にいたったといいます。100で予選落ちするより、400でメダルを争った方がインパクトは大きいはずだと。
為末さんは「競技に勝ちたい」という目標がはっきりしていたから、勝つためにはどうすれば良いのかを考え、勝つために種目を転向することができました。花形である100にロマンを求めることも出来たはずです。ただ、そうしていたら僕は彼のことを知ることはなかっただろうし、この本も生まれていないでしょう。
また、諦めるには限界を知ることが大切だとも述べています。厳しいトレーニングをしてそれでも勝ち目がないとわかった時に、諦めることが出来ると。
これも簡単なようでいてとても難しいことだと思う。特に僕にはここが一番難しい気がします。僕自身、限界まで頑張った経験があるかと言われると自信がありません。仮に限界まで頑張っていたら引きずるだろうなー。
自分の過去に当てはめてみると、高校で野球部を選んだことは少し無駄だった気がします。僕は甲子園に憧れていたはずですから、県のベスト8を目指しているような学校に進学した時点で諦めても良かったはずです。というより中学でレギュラーを取れなかった時点で甲子園に行くことは厳しいとわかっていましたが、そのことからは目を背けてしまった。
いっぽう、同級生で高校では野球を選ばなかった友人がいます。彼は少年野球の時には同じ学年の選手が打てないほどの速球を投げていましたが肘を壊してしまいました。打撃も良かったから中学では野手として活躍しましたが、おそらく彼は今後自分が思い描いた野球人生を歩むのは難しいと判断したのでしょう。戦略を変更し、高校では野球を選びませんでした。夏の予選の応援にも来てくれたから、きっと割り切れたんだと思います。
僕は自分より上手い彼が野球部に入らなかったことはもったいないことだと思ったし、野球部の顧問の先生にもその辺をちくちく言われたそうです。そうした周囲の目が諦めることを難しくすることがあります。
さて、本の中でも自分の戦略を問い続けることが重要だと述べています。「自分が目指すものはこれでいいのか」、「当初の目標から外れていないか」、「戦略自体を変更した方がいいのか」。
高校生の僕は自分の戦略を問うことをしませんでした。チームメイトとともに県の上位を目指したことは悪いことではないし、あの頃体を鍛えたからこそ今も何とか生きているとも思います。
ですので野球部で活動したことに後悔はありませんが、「当初の目標は『甲子園に行く』じゃなかったか」、「このままでは甲子園に行くことはできないがどうするか」、と問わなかったことは後悔に値します。
何かひとつ選択したら他のことを諦める必要があります。諦めるのには勇気がいります。その勇気は戦略から生まれます。戦略を実現させるための戦術がベターなのかを問うのはもちろん、戦略自体も問い続ける必要があるのです。
また、本書の中で為末さんのお母さんが「陸上なんていつやめたっていい」と言ってくれたから続けられたと述べています。やめてもいいという選択肢があったからある意味気楽に陸上に取り組めたと。
他人が期待していると思うとなかなか踏ん切りが付かないことってありますしね。
ということで買って読んで大満足。
そうして今、目標を決めなければと焦っている最中であります。これはたぶん焦ってもいいと思う。
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