ノルウェイジアン・ディスコのみならずゼロ年代以降のディスコリヴァイヴァルを牽引したトレンドセッター、トッド・テリエのオリジナル・アルバムです。
CDも持ってるとか、どんだけファンだよ
質の高いリエディット作品を量産していた時分からオリジナル作への意欲を語っていましたが、その情熱を見事に作品に注入させることに成功しています。ちなみにアナログは45回転2枚組。やるまんごいすー(ものすごくやる気満々)っぷりがひしひしと伝わってきます。
他のノルウェイ勢のアルバムにはプログレッシヴ・ロックの影響を感じますが、本作はそれよりずっと都会的な印象です。ていうかマンゴリアン・ジェット・セットやビョーン・トシュケの密林感が濃密すぎる。「お前らのアングラ趣味にはうんざりなんだよ!」とはたぶん思っていないでしょうけど、ジョルジオ・モロダーのサウンドトラックやイタロディスコ、エレクトロサウンドにAORなどのエレメントを「今聴いて面白い状態」にアップデートさせた作品と言えます。
だから、この音は80年代には生まれようがないけど「83年に大ヒットしたアルバム」と言われるとなんだかそう聞こえるような…
アルバムの展開が素晴らしいです。CDとLPで同じ曲順ということからも曲順に随分腐心しただろうことが窺えます。
星空を思わせる煌めきを携えたアルペジオで幕を開ける本作。A3"PREBEN GOES TO ACAPULCO"の波のようなシンセ、メロディ、ドラム、ストリングスが絶妙に配置されたミッドチューンが素晴らしいです。早くも前半のハイライトがやって来ております。
"PREBEN GOES TO ACAPULCO"
スペーシーやでぇ
トロピカルなA4"SVENSK SAS"で"ガッ"とションテンを上げ、アップリフティングなピアノリフでぐいぐい引っ張るハウストラックB2"STRANDBAR"、ランニングベースがドライヴするその上をスペーシーなシンセが舞い飛ぶ真性イタロブギーB3"DELOREAN DYNAMITE"でアルバムの熱気は一気に上昇します。
"DELOREAN DYNAMITE"
B3のアウトロで熱狂の余韻を心地良く鎮めながら静かに始まるC1"JOHNNY AND MARY"。ブライアン・フェリーがヴォーカルです。この展開には思わずため息が漏れます。エンディングに持って来ても映えそうな味わい深いカバー曲をここに置くことでアルバムの場面転換が非常に上手くなされています。この後にテイストをがらっと変えたジャズロック調のC2が来るのですがアルバムの流れは不思議と調和がとれています。
B3-C1-C2の展開には特に強い説得力を感じることができます。
"JOHNNY AND MARY"
声の良さと音の空間設計が際立つ逸品。これを中盤に持ってくる手腕よ。
D面は2曲ともダンサブルなナンバーだ。D1"OH JOY"の宇宙へ飛び立つようなメロディが最高、ピークタイム! ラストは大ヒットとなったEP収録曲"INSPECTOR NORSE"です。D1の爆発を程よく中和しながら、興奮しざわつくフロアを笑顔に導くようなダンスミュージックとしてのポップネスが素晴らしいです。
"OH JOY"
ネバーエンディングストーリーのファルコンを思い出しますよ(私見)。
2014俺的ベストディスコ候補
なぜダンサブルなシングル曲をラストに持ってくるのだろう? アルバムのクレジットを見ながら疑問に思っていましたが、フロアキラーなD1と組み合わせることでもう一度リピートしたくなるようなラストになっていると思います。ディスコリバイバル時代の良質AORでございますな。
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