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2014年9月15日月曜日

SVEN KACIREK 『SCARLET PITCH DREAMS』

今回はインスタ画像じゃない(手抜き)

 随分サボってしまいました。「"まとまった時間"なんてものはこれからもやってこない」ということを肝に銘じます。

 かなり意図的にアナログレコードを扱ってまいりました。が、最近ヴァイナルの再評価も進行し調子が良いので今回はCDで購入したものです。どうでもいいけどレコードのことを"ヴァイナル"と言う度胸が未だに身に付きません。
 僕自身、ずっとCDで音楽を聴いてきたので愛着のあるメディアです。今になって「実はいちばん中途半端なメディアだったな」と知った風に言い切ってしまうことに少なからず抵抗があります。

 CDは"アルバムをだらだら聞くこと"、乗用車で聞くのに適したフォーマットだと思います。クルマも最近はHDに音楽を入れられるようですが。。。

 前置きが長くなりましたが今日はスフェン・カシレク(SVEN KACIREK)の『SCARLET PITCH DREAMS』です。ドイツはハンブルクのパーカッショニスト、ヴィブラフォン奏者、にとどまらずあらゆる楽器を演奏する多才の人です。
 2012年、ドイツの[PINGIPUNG]よりリリース。どちらかというとエレクトロニカに寄ったレーベルと言えそうです。

 アフリカのミュージシャンも招いたらしく、アフリカ音楽のような印象を強く感じます。多層的に編まれたパーカッションのアンサンブルが心地よく、ディープでありながら後味すっきりの幻想エスノ音楽に仕上がっております。

 もともとエレクトロニカのアーティストとしてキャリアをスタートさせたこともあって、打ち込みも積極的に取り入れております。そうすることでパーカッションやフィールドレコーディングの音色はより効果的に鳴り、かつまた清涼感を獲得することに成功しています。




 ニューエイジにも通じる"作り込まれた自然音楽"。僕が勝手に設定している"フェイクエスノ"に該当する音楽です。言葉は悪いですが、本物を超える跳躍力がフェイクにはあります。

 アフリカのミュージシャンを招いて繰り広げられるモノホンのワールドミュージックへの憧憬と、自然は征服するものという西洋人のDNAに刷り込まれた価値観が静かに調和しています。

 僕の住んでいるところは高速道路をくぐると急に山林の風景が広がります。そこをクルマで行きながらこれを聞くと山野の色彩とサウンドスケープが絶妙にマッチして本当に心地が良いです。これが都市の風景だったらどんなイメージが湧くのでしょう。
 移ろう風景に音楽を重ねるという遊びはレコードではなかなか難しいです。それを容易にしているだけでCDの価値は十分にあると言えると思います。

2014年6月26日木曜日

BRONX DOGS 『THREE LEGGED FUNK』

ジャケもどこかサグい。

 ラブンタグ『CAMPFIRE』にピックアップされている問答無用のどアンセム"TRIBUTE TO JAZZY JAY"でおなじみブロンクス・ドッグス(BRONX DOGS)の2000年リリースのアルバムです。リリースは[HEAVENLY]、アルバムのジャケットの裏にはシングルをリリースしていた[MARBLE BAR]のロゴも入っています。

 どうでも良いけど"カンジダ"って曲出してるな。気になりますがなかなか試聴リンクが見つけられない。どんなニュースクールブレイクビーツだ。


 さてブロンクス・ドッグスってどんなブラザーよ、ということで。
 リチャード・セン(RICHARD SEN)とポール・イヴ(PAUL EVE)によるユニットです。イヴさんの方は行方不明です(=調べるのがめんどかった)。どこかで幸せにやってくれていることと思います。

 R・センはパデッド・セル(PADDED CELL)というユニットで活動したり、また[MIXED BLOOD CUTS]というシリーズ(レーベル名でもある)を主宰するなどしています。いずれもニューディスコによった作風です。MIXED〜はディスコダブ、リエディット好きにドンズバなキラーなロッキンディスコシリーズで僕も大好物であります。
 また[ZE]のリミックスアルバムはじめいろんなところに出没、最近では'87-'91UK産のアシッドハウスをコンパイルした『THIS AIN'T CHICAGO : THE UNDERGROUND SOUND OF UK HOUSE & ACID 1987-1991』を監修し話題を集めました。
 今もなおディスコリバイバルの重要人物と言えるでしょう。何か関連作がリリースされた時は試聴しておいて間違いない存在です。

 ...ていうかブロンクスドッグスという名前とかサンプリングを用いたオールドスクーリーなパーティ感とかでガッチガチのニューヨーカーでLLクールJみたいなのを想像していましたが、むしろバッキバキのUK野郎ですね。ポール・イヴにいたっては白人ですし。『THIS AIN'T CHICAGO』でふと気付きました。
 バッキバキのUK野郎って何。

 なにはともあれ。フロアボムをば
"TRIBUTE TO JAZZY JAY"
"
いやぁ、いつ聴いてもかっこいいですね。タイトルからするにジャジー・ジェイに捧げられた曲です。ジャジー・ジェイとは、"PLANET ROCK"の制作にも携わったとされる<ZULU NATION>のオリジナルメンバー、だそうです。この辺もニューヨーカーだと誤解させる一因です(僕的に)。
 なんかナレーションでもアフリカバンバータとか言ってますな。「大ネタ」と言われるサンプリングソースを引用している、良い意味で"反則"な曲ですね。

 D2はキース・テニスウッド(KEITH TENNISWOOD)をエンジニアに迎え、<ROTTERS GOLF CLUB>でレコーディングされています。

 ディスコ〜ディスコフィールなハウス〜ブレイクビーツハウス、そしてNUハウス、ディスコダブへと連なるダンスミュージックの歴史が凝縮されたアルバムです。パル・ジョーイ、ボム・ザ・ベース、を経てトゥー・ローン・ソーズメン、それからDJハーヴィというラインも見えてくるかと思います。
 その割に知名度は今ひとつ、というか知ってる知らないの温度差が激しいユニットではあります。

 

2014年6月10日火曜日

DJ HARVEY 『SARCASTIC STUDY MASTERS VOL.2』

 2001年にアパレルブランド<SARCASTIC>のノベルティとして限定配布されたレアなMIXが復刻しました。
 DISCOGで5万円以上をつけていたそうですが6/9現在オリジナルは3万円強のようです。(参考URL:http://www.discogs.com/marketplace?master_id=616026&ev=mb) 僕が数年前に中古屋で見かけたときは7千円でした。


 リンドストロムをして「世紀のミックス」と言わしめた、コズミックディスコ、バレアリックの現代的古典です。現代的古典て言葉がおかしいだろと思いますが、バレアリックの指す意味が変化しているためにこのように書きました。というよりこのミックス以降にバレアリックがスタイルを指す言葉から特定の音色をイメージするジャンルの言葉になったと言えそうです。

 ちなみに古典という語に関しても一言。わずか10余年前の作品ですがその後のディスコリバイバルの最大の指標となっているのは明らかですので、「『規範とすべきもの』として認知されている」点で古典と呼ぶにふさわしいかと思います。

↓その、なんというか、あった。


2014年5月29日木曜日

PRINS THOMAS 『PRINS THOMAS 3』

夕焼けとか撮影してしまうくらい暇です。
更新が滞りがちです。頑張ります。
3作目はぐっと落ち着いて雪の中。ちなみにCD付でございます。
今日はやっと届いたプリンストーマス(PRINS THOMAS)のアルバムです。あと書いていないのはファーストアルバムっすね。

 なんともタイトルがわかりやすい3作目です。

 これまでもサイケデリック・ロック、プログレをディスコフォーマットに落とし込むという手法を得意にしていた氏ですが、ぐっと振り切れた本作は現代版クラウトロックです。
 なんというかミヒャエル・ヘニッヒ(MICHAEL HOENIG)の作品にこんなのがありそう、といった風情のエレクトニック・ミュージックです。

◆RA: ニュース: Prins Thomasがニューアルバムを発表
・「大きなコンセプトや、これといったテーマや計画があるわけじゃない。スペースディスコではないけれど、スペースはたくさんある」
 こうしたコメント通り、力はいい具合に抜けた、そしてイマジナリーなエレクトロニックサウンドで彩られたアルバムです。

 A1"HANS MAJESTET"はファニーな雰囲気のベースライン。バルデッリのミックス『COSMIC DISCO? COSMIC ROCK!!!』収録の"SAY SOMETHING"にちょっと似ています。こちらはインストですが。
"HANS MAJESTET"
 レトロなシンセとギターサウンド。
後半は北欧カラーのメランコリックなメロディが登場~。

 A2ブレイクビーツなドラムとエキゾチックなメロディが絡むミステリアスなトラック。
 A3ハンドクラップとシンセアルペジオで押すリスニングトラック。

 A面はビートがあり、エレクトロファンクでブレイクビーツなわけですが、それらの音はダンスミュージックを指向していません。ここ、けっこうポイントです。

 B1"2000 LYSAR FRA MORELLVEIEN"はワウベースがサイケな香りを醸します。 ギターが絡み次第に音数は増えていきますが地味な展開です。長いけどインタールードな曲といえるかもしれません。派手に展開しない分、繋ぐときには重宝するかも(それは僕の腕前基準での話ですが)。ZERO SET IIのリエディットの雰囲気に近いですね。

"2000 LYSAR FRA MORELLVEIEN"
ねっとり脳に染み渡る感じよ。

 B3ゆったりサイケロック。ファズ&ディレイ。

 C1"LUFTSPEILING"が俺的ハイライトです。ノンビートですが強い説得力がある、美しい曲です。水の流れ、もしくは宇宙を思わせるシンセとリズムマシンで刻むアルペジオベースのループ。中盤に差し込まれるディレイのかかったギターがまたズバッと心に刺さります。タイミング、音色が絶妙です。恍惚トラック♡
"LUFTSPEILING"
長いけど聴いてみて〜


 C2"OASE"はC1の流れをくんだアンビエントトラック。電子音の湖上に漂う快感。

 D面でやっとダンスミュージックよりの曲が登場します。
 D1"TRANS"はマンゴリアンジェットセットの"TOCCATA"っぽいエモーショナルかつセンチメンタルなコズミックダンス。"スパスティックスネア"が登場。プラスティックマン"SPASTIK"のようなタカタカタカタカいうあれです。この言葉は流行んねえな(余談)。
"TRANS"
プログレ風味のハウストラック。メロディアス。



 D2"LABYRINT"はディスコ化プログレ。ベースがうねるストレートな四つ打ちトラックがかっこいいです。
"LABYRINT"
ぐにぐにしたベースがワルくて素敵なオルタナディスコ

 D3はイタロディスコ。シャイニーなシンセ。

 八王子SHeLTeRでリスニングセットをやったこともあり、ダンサブルだけではない彼の魅力がこの作品で見事に開陳されています。引き出しが多いですな〜。
 ディスコミュージックを通して世界中のサイケ音楽を啓蒙してきたプリンストーマスの、21世紀のコズミッシュ・ロックといえそうです。

◆PITCHFORKのレヴューは7.2点。
 良いのか悪いのか、微妙ーな点数です。まあでもCANの『OUT OF REACH』の約2倍ですから、世紀の名作という評価なのかも知れません。なんつって。全2作が6点台だったので高評価なのでしょうー。
 関係ないけどこんなんあった。後で観よう。んで買おう(照)。
「Pitchforkが選ぶ最高評価10.0点をつけたアルバムメドレー」
http://www.nicovideo.jp/watch/sm11361149

関連リンク
・PRINS THOMAS 『PRINS THOMAS 2』

2014年5月14日水曜日

IAN HUNTER "BASTARD (A MOUNTAIN OF ONE REWORK)"

 とりあえずア・マウンテン・オブ・ワン(A MOUTAIN OF ONE)(以下、AMO1)の何かしらを見かけたらなるべく買うようにしています。レオ・ゼロ(LEO ZERO)のリエディットとか、全然追っかけられてませんが。
渋い。上のロゴで辛うじてAMO1とわかるラベル。

 今回はAMO1のリエディットワークです。ネタはモット・ザ・フープル(MOTT THE HOOPLE)のボーカル、イアン・ハンターのソロ作"BASTRAD"です。

2014年5月9日金曜日

UNTOLD 『BLACK LIGHT SPIRAL』

 ロン・モアリ(RON MORELLI)自身の作品、また彼の主宰する[L.I.E.S.]がリードする<ロウハウス>がダンスミュージックシーンを浸食して暫く経ちます。不機嫌な音がゴツゴツと耳にぶつかってくる心地よい不快感はハードコアパンクの衝撃を現在に蘇らせます。

 ロウハウスの出現を用意したのはダブステップと、それに続くポスト・ダブステップだということは言を俟たないでしょう。
 と、偉そうに言うことは容易ですが、ではダブステップとは何ぞやという問いは出現から年月を経た今、むしろ答えるのに困難になっている印象を受けます。"ド・ドン・(休符)・ドン"というキックの音をそう呼んでいただけではないか、と。
 ポスト期に入ってからはさらに難しくなり「ゴールドパンダってエレクトロニカじゃないの?」などと何度となく思わされました。ジェイムス・ブレイク(JAMES BLAKE)も含め「ポスト・ダブステップ」というジャンル名は多分にマーケティング、セールス用語という機能を持っていたためにそうした混乱は生まれたのだと思います(余談)。

 (ポスト)ダブステップはジャンルとしては捉えづらく、リズムとBPMだけが特徴としてかろうじて述べることが可能な気もしなくはないですが、大切なのはこのムーヴメントによって既存のジャンル力学から自由なアイディアを持った才能がたくさん出て来たことでしょう。

ブタの置物、かわいい。ちょうど手足の比率が今の息子くらい♡

 ブリアル(BURIAL)、シャクルトン(SHACKLETON)に続くダブステップ〜ベースミュージックの特異な才能、アントールド(UNTOLD)の遅れて来たファーストアルバム。リリース元である彼主宰の[HEMLOCK]はジェイムス・ブレイクの最初のシングルをリリースしたレーベルとしても有名だ。
↓アルバム全体を聴けます。

 不穏なサイレン音から始まる本作は一般的なダンスミュージックの音のバランスから幾分ズレた、マッドで地下臭ムンムンのサウンドに仕上がっています。チープな言い方になってしまいますが、<ダンスミュージックにおけるハードコアパンク>を地で行っている音です。
 それは「ラヴソングを歌え」というボイスサンプルを執拗にループさせながら渦を巻くような音響をまき散らす"SING A LOVE SONG"などに顕著です。
"SING A LOVE SONG"
狂気が滲み出てますわ

 また低音を以上に強調した"STRANGE DREAMS"もまさにパンクなサウンド。最高やでぇ。
"STRANGE DREAMS"
これもまた強烈。ベースの音を聴いてやってくれ。

 ノイズミュージックなど実験音楽の要素も含んでいるのでマニアックな印象ですが、先鋭的な音のセンスの目指す先はダンスミュージックに他ならず、クセの強いという言葉では甘っちょろいほど強烈な音はしかしいっぽうで強烈に踊れます。"
 語れない(語ることが出来ない)(=UNTOLD)"と名乗るジャック・ダニングが奇妙な音を駆使しながらそれでもなお多大な支持を集めるのはダンスミュージックのプロデューサーとしての才覚、「にもかかわらず踊らせる」才能に他なりません。

 ポスト・ダブステップ、ロウハウス、またゴルジェなどの新しい潮流は少し隙を見せればいたずらに抽象的なサウンドに陥る危険性を多分に孕んでいますが、この作品はそうした甘えを許しません。ノイジーでビザールで厭世的にすら聞こえるサウンドでも最高のダンスミュージックは奏でられることをこの作品は証明しています。

 そう考えるとこの男もきわめて楽観主義的なのかもしれません。

 暴力的に、そして乱暴に鳴らされる音は、僕たちの心象風景にマッチしてしまいます。個人的な体験としましてはブリアルの"STREET HALO"以来の聴き心地です。

 不穏。

 ここからまた何かが生まれ出しそうな蠢きが音から漏れ出してくる。文句なし。

SOUNDCLOUD流しながらこれを書いていました。これもすんげーかっこいい。

2014年5月1日木曜日

A SILVER MT. ZION 『HE HAS LEFT ALONE BUT SHAFTS OF LIGHT SOMETIMES GRACE THE CORNER OF OUR ROOMS』

 いらっとくるブログから思いを巡らせるが増えているような気がします。良くない傾向です。心のどこかで上から目線で語りたい欲求があるのでしょう。にっこり、日暮里スルーするようにします。

 今回はA SILVER MT. ZIONの『HE HAS L(後略)』です。母体であるGODSPEED YOU! BLACK EMPEROR(以下GY!BE)主宰のレーベル[CONSTELLATION]から2000年にリリースされています。

 A SILVER MT. ZIONはGY!BEのエフリン・メナック(EFRIM MENUCK)、ティエリー・アマー(THIRRY AMAR)、ソフィー・トゥルドー(SOPHIE TRUDEAU)の3人が結成したものです。
ちなみにGY!BEはセットファイヤーなんちゃらみたいなのとか多数の別プロジェクトがあります。(参考にオフィシャルサイト)

 GY!BEについて少しだけ触れます。モントリオールのポストロックバンドでギターやドラム、ベースに加えヴァイオリンなどのストリングセクションもある大所帯です。
 「重厚かつ繊細で美しいアンサンブルが〜」など、書こうと思えばポストロックのテンプレ的なことは書けますが、彼らの特徴は<全曲基本的にクレッシェンド、デクレッシェンド>です。同じフレーズを繰り返し、別のパートのフレーズが重なり、別のパートが…と、音が次第に分厚くなりハイライトへ向かうスタイル。などと書くとしょぼそうですが徐々にスケールアップして最後に描かれる壮大なサウンドスケープとカタルシスは筆舌に尽くしがたい、素晴らしいものです。以降のインストバンドやエレクトロニカアーティストにも多大な影響を与えております。
 ポストロックバンドと呼ばれる集団で彼ら以上のバンドはいない、などと言ってしまっても構わないくらいです。ミニマルミュージックの圧倒的な破壊力がここにはあります。
"GY!BE、それは地上で最も受けたい暴力"


 90年代後半、体感的には00年代のはじめ、GY!BEは避けては通れぬ存在だったと思います。
●避けて通れない感が伝わるだろう、ブログブーム以前のシンプルな個人サイト。
(好感度大。移設先のブログではすでに書いていないようですが是非また書いてほしいですね。あとURLが業者級のいい文字の並び。)
 少なくとも「こういうレヴューサイトを作らないと」と思わせる佇まいが当時はありました。
 ええ、僕も手書きHTMLでフレーム組んでほぼ同じレヴューサイトやってましたし。

 当時の音楽雑誌NMEは今のピッチフォークよりも影響力の強いメディアだったのですが、そんな雑誌が表紙にババンと据えた彼らはポップミュージックの、というよりはインディロック、オルタナティブ業界の"希望"そのものだったと思います。

 『YANQUI U.X.O.』のジャケットで音楽メジャーと軍需産業の繋がりを図示したのは「そこまでやるとジョークにしか見えない」というものではありましたが、それでもなお徹底した反コマーシャル、反資本主義の姿勢はシリアスな音の世界観と絶妙にマッチしたものでした。姿勢を含めた、"存在自体がおそろしく格好良いバンド"ですね。

●ele-king『ALLELUJAH! DON'T BEND! ASCEND!』のレビューもなんかかっこいい。
(ネタ的にエレキングを使うのは申し訳ないですが、ビョーン・トシュケ『KOKNING』のレビューとの温度差はやっぱあるよな。)

 話がだいぶ逸れました。今回紹介するアルバムに話を戻します。
個人的には最も好きなジャケットのひとつです。


 本体のスケール感と比べれば「小品」の印象も受ける作品です。作品はポストロックのジャンルに入りますが、現在だったら<ポストクラシカル>と呼ばれると思います。
 ピアノとヴァイオリン、コントラバスがシンプルに鳴っています。曲調は暗くいつまでも晴れない曇天のようです。そして高貴で美しく、哀しい。

 A2"SIT IN THE MIDDLE OF THREE GALLOPING DOGS"ではドラムがより前面にでて所謂ポストロック的に聞こえます。ここでもヴァイオリンのフレーズが丹念にループされています。

 ストリングスの音色を映画サントラで聴く機会が多いせいかもしれませんが、この作品も映画を観ているような気分になります。
 —夜。石畳の路地裏。昨日から降り続ける弱い雨。石畳に出来た水たまりが街灯を鈍く反射させる。ポケットの煙草はすでにくしゃくしゃだ。白い息を手に当てながら地面に足音を打ち付けるー
みたいな感じです。皆さんはどんな情景を思い浮かべるのでしょうか。

 アルバムを通し峻厳な美意識が貫かれており、アルバムを通して聴くことを要求してくる作品です。アルバムという形態に必要性を感じられるのはえてして素晴らしい作品が多いです。
"SIT IN THE MIDDLE OF THREE GALLOPING DOGS"
かっこいいポストロックトラック



"13 ANGELS STANDING GUARD 'ROUD THE  SIDE OF YOUR BED"


アルバム全曲はこちらから。

『Godspeed You Black Emperor.1976』

GY!BEのバンド名元ネタ映画がYOUTUBEありました\(^o^)/

2014年4月23日水曜日

TODD TERJE 『IT'S ALBUM TIME』

 ノルウェイジアン・ディスコのみならずゼロ年代以降のディスコリヴァイヴァルを牽引したトレンドセッター、トッド・テリエのオリジナル・アルバムです。

 
CDも持ってるとか、どんだけファンだよ

 質の高いリエディット作品を量産していた時分からオリジナル作への意欲を語っていましたが、その情熱を見事に作品に注入させることに成功しています。ちなみにアナログは45回転2枚組。やるまんごいすー(ものすごくやる気満々)っぷりがひしひしと伝わってきます。

 他のノルウェイ勢のアルバムにはプログレッシヴ・ロックの影響を感じますが、本作はそれよりずっと都会的な印象です。ていうかマンゴリアン・ジェット・セットやビョーン・トシュケの密林感が濃密すぎる。「お前らのアングラ趣味にはうんざりなんだよ!」とはたぶん思っていないでしょうけど、ジョルジオ・モロダーのサウンドトラックやイタロディスコ、エレクトロサウンドにAORなどのエレメントを「今聴いて面白い状態」にアップデートさせた作品と言えます。
 だから、この音は80年代には生まれようがないけど「83年に大ヒットしたアルバム」と言われるとなんだかそう聞こえるような…

 アルバムの展開が素晴らしいです。CDとLPで同じ曲順ということからも曲順に随分腐心しただろうことが窺えます。

 星空を思わせる煌めきを携えたアルペジオで幕を開ける本作。A3"PREBEN GOES TO ACAPULCO"の波のようなシンセ、メロディ、ドラム、ストリングスが絶妙に配置されたミッドチューンが素晴らしいです。早くも前半のハイライトがやって来ております。
"PREBEN GOES TO ACAPULCO"
スペーシーやでぇ

 トロピカルなA4"SVENSK SAS"で"ガッ"とションテンを上げ、アップリフティングなピアノリフでぐいぐい引っ張るハウストラックB2"STRANDBAR"、ランニングベースがドライヴするその上をスペーシーなシンセが舞い飛ぶ真性イタロブギーB3"DELOREAN DYNAMITE"でアルバムの熱気は一気に上昇します。
"DELOREAN DYNAMITE"

 B3のアウトロで熱狂の余韻を心地良く鎮めながら静かに始まるC1"JOHNNY AND MARY"。ブライアン・フェリーがヴォーカルです。この展開には思わずため息が漏れます。エンディングに持って来ても映えそうな味わい深いカバー曲をここに置くことでアルバムの場面転換が非常に上手くなされています。この後にテイストをがらっと変えたジャズロック調のC2が来るのですがアルバムの流れは不思議と調和がとれています。
 B3-C1-C2の展開には特に強い説得力を感じることができます。
"JOHNNY AND MARY"
声の良さと音の空間設計が際立つ逸品。これを中盤に持ってくる手腕よ。

 D面は2曲ともダンサブルなナンバーだ。D1"OH JOY"の宇宙へ飛び立つようなメロディが最高、ピークタイム! ラストは大ヒットとなったEP収録曲"INSPECTOR NORSE"です。D1の爆発を程よく中和しながら、興奮しざわつくフロアを笑顔に導くようなダンスミュージックとしてのポップネスが素晴らしいです。
"OH JOY"
ネバーエンディングストーリーのファルコンを思い出しますよ(私見)。
2014俺的ベストディスコ候補

 なぜダンサブルなシングル曲をラストに持ってくるのだろう? アルバムのクレジットを見ながら疑問に思っていましたが、フロアキラーなD1と組み合わせることでもう一度リピートしたくなるようなラストになっていると思います。ディスコリバイバル時代の良質AORでございますな。

2014年4月18日金曜日

MUNGOLIAN JET SET "NAVIGATOR"

B面は音飛びが激しかったので割愛(泣)


 先日、新曲"FRISCO SPEEDHALL"を発表し、リリースが待ち遠しいマンゴリアン・ジェット・セット(MUNGOLIAN JET SET)。
 待ちきれない感を出しつつ2006年にリリースされた12"をちんたらご紹介いたします。

 2006年にブッゲ・ヴェッセルトフト(BUGGE WESSELTOFT)主宰の[JAZZLAND]よりリリースされたアルバム『BEAUTY CAME US IN STONE』からカットされたシングルです。B面もアルバム収録の"TECHNON THAI"です。

 その前にマンゴ…誰よ?という向きもあろうかと思います。僕もそうです。ということでさらっとご紹介します。

 ◇ポール・'ストレンジフルーツ'・ナイアス(PÅL 'STRANGEFRUIT' NYHUS)とクヌート・セヴィーク(KNUT SÆVIK)の2人組。
以下、クラベリアから引用(速攻で調べるの諦めた)。
・引用元
●http://www.clubberia.com/ja/artists/2270-Mungolian-Jetset/
●http://www.clubberia.com/ja/interviews/289-Mungolian-Jetset/ 2009年来日時のインタヴュー。

 DJストレンジフルーツのほうは90年代初期のレイヴカルチャーに影響を受け、クヌート・セヴィークはスタジオ・エンジニアとしてキャリアをスタートさせています。ストレンジフルーツはプリンス・トーマス(PRINS THOMAS)にDJを教えたそうで、ノルウェイジアン・ディスコのゴッドファーザー的な存在といえそうです。実際、現場でどう思われているかは知りませんが(来日時は汗びっしょりでディスクヨッケに引かれてた)。

 アルツ(ALTZ)のリミックスでそのモダーンなセンスは遺憾なく発揮されてましたが、実際にスパークしたのは2010年に[SMALLTOWN SUPERSOUND]からリリースされた"MOON JOCKS N PROG ROCKS"かと思います。サイケデリック・ディスコ・ファンクとでも申しましょうか、かのデヴィッド・マンキューソ(DAVID MANCUSO)がプレイしたことで大きな話題となり僕もファーストプレスは買い損ねました。悔しくてセカンドプレスは2枚買いました。気は晴れなかったです。

"MOON JOCKS N PROG ROCKS"
サイコーっす。

 ディスコグラフィを見る限りそこまで多作には見えませんが、リミックスやコラボレーションなどがあり、実際にはもう少し作品が出ているような気もします。

 話を"NAVIGATOR"に戻します。「WRITTEN BY : RUPERT HINE/DAVID MACIVER/TREVOR MORAIS/JOHN PERRY MARK WARNER.」とあり、次の行には「PUBLISHED BY : CHRYSALIS MUSIC LIMITED (C) 1979.」とあります。検索してみるとQUANTUM JUMPの"CAPTAIN BOOGALOO"と"THE LONE RANGER"のヴォーカルをサンプリングしていました。
 なんだかマメね、と思いましたが(助かりますが)、流通がユニバーサル・ノルウェイなので「その辺クリアにしとけや」というお達しがあったかもしれません。

貼れる音なし。すまん。
 ベースのフレーズ、犬の声(?)、男の声や様々な音の断片を織り交ぜたスペーシーなイントロから、腰の強い土着的でファンキーなパーカッションに粘り気のあるベースのループでぐいんぐいんドライヴ!エレクトロニカ的なノイズや先に上げた"THE LONE RANGER"の民俗音楽っぽいスキャット、"CAPTAIN BOOGALOO"のコーラスが巧みに配置されたこれぞMUNG流ギャラクティックディスコな曲構成。
 リンク先のインタヴューで「テイストの異なるサンプルをひとつの曲の中でまとめようとしている」と語っていますが、SF系トバしSEやパーカッション、ボイスサンプルなど異物がそれぞれに作用してグルーヴになっていくスリルがたまらんちんです。

 中盤に効果的に、そして終盤は独壇場になる豪快かつ流麗なピアノでクライマックスを迎えます。このピアノもまたこれまでの展開からしてみれば"異物"なはずなのですが差し込まれた瞬間のカタルシスと説得力に嘆息を禁じ得ません。ちなみにブッゲ・ヴェッセルトフトが弾いているそうです。

 僕が思うに、ほとんどの僕らの音楽は、様々なアイデアのミックス、チャレンジ、失敗、そして遊びの中から生まれてくるんだ。僕は誰かのレコードを聴いてアイデアが湧いてくることが多くて、それは誰か他人が作った音楽や何かを、僕なりに解釈したいっていうことなんだと思う。もちろん全部をコピーしようなんて気はさらさらなくて、その音楽の断片だったり、その音楽を聴いた時の感情だったりを使って、Mungorealize(※)したいのさ。 (※MungolianとRealizeをかけたPaulの造語のようです。)」
(上述インタヴューより http://www.clubberia.com/ja/interviews/289-Mungolian-Jetset/ )

 この作品の後も独特のセンスがギラギラ輝いています。近年の作品はくっきりとしたサウンドですがこの時分のもごもごしたサイケデリックな雰囲気もまた素敵でなりません。個人的にはこっちのが好きです。

 申し訳ないのでサンプリングソースを貼って茶を濁します。
"THE LONE RANGER"

"CAPTAIN BOOGALOO"

2014年4月13日日曜日

TODD TERJE 「TTJ EDITS #889」

 2014年の上半期の注目リリースのひとつ『IT'S ALBUM TIME』も控えるトッド・テリエ(TODD TERJE)。彼の魅力はまずもって確かな知識とユーモアを感じるチョイスが光るリエディット作品にあります。

 これまでも数多くのリエディット、リミックス作品を残しております。しかしリエディット作品の多くが著作権上の問題を抱えています。グレーゾーンというやつですな。
 著作権上の問題といってもそれがきっかけで自身のアルバムにブライアン・フェリー(BRYAN FERRY)を呼ぶことが出来ているのですから、"問題"ってそもそも何よ、という気もします。

 オリジナル作は"EURODANS"以降数年間リリースがなく(あんのかな?)、それ故にディスコリバイバルのファン以外は「名前は聴くけどようわからん、得体が知れない」という印象が強いかもしれません。数年前の来日時でもフロアは閑散としていました。
 それもここ2年くらいのシングルのヒットと来るアルバムリリースで状況は大きく変わるのでしょう。いやもう変わっているらしいです(新作国内仕様のライナーより)。そういえばリキッド・ロフトでDJをやってたのはドクターでした。

かわいい。

 "TTJ EDITS"シリーズの現在最新作です。彼はトッド・テリエ名義以外にもタンゴテリエ(TANGOTERJE)の名でもリリースしておりその名義でもナイスリエディットをリリースしています。

 ホワイト盤でのリリース、リプレスもあり彼のリエディットワークを正確に把握することは(僕にとって)困難ですが、今回収録の曲はいずれもこれが初出ではありません。と、思います。

 "DIAMONDS"はポール・サイモン(PAUL SIMON)の"DIAMONDS ON THE SOLES OF HER SHOES"が原典でございます。
 原曲の雰囲気をほぼそのまま残したトロピカルムード満点のミッドチューン。随所に差し込まれるリヴァーブ処理が甘い幻想を演出しております。

"DIAMONDS"
ちなみに、1986年リリースの『GRACELAND』に収録されています。この曲もまた<バレアリック古典>とされる曲で、そういうことを聞くとバレアリックに関わる者の業の深さのようなもを感じ戦慄を禁じ得ません。
「こんなのまで聴いているのか!」

 A2"HIGH LIGHT"はバラバス(BARRABAS)の1975年(1976?)リリースのアルバム『WATCH OUT』収録のHIGH LIGHT、それの"TODD TERJE REKUTT"バージョンです。バラバスは"WOMAN"や"MELLOW BLOW"などのクラシックが多数ある、その道ではおなじみの存在ですね。

"HIGH LIGHT TODD TERJE REKUTT"
こちらも原曲を活かした内容です。

 B面はロキシー・ミュージック(ROXY MUSIC)のブライアン・フェリーの"DON'T STOP THE DANCE"のリミックス。こちらは一瞬原曲の様子がわからないようなテクノ〜ミニマルハウスに仕立てた一品。寄せる波のようなシンセアルペジオで引っ張る端正なリミックスで、上品な昂揚感が堪能できます。効き馴染みのある「DON'T STOP...」のフレーズが効果的に配置されていることも見逃せませんぞ。
 このリミックスはディスコのみならずテクノ方面でのリミックスも可能です。最近の12"がテクノファンからも賞賛されている彼の優れたお仕事でございます。

●ブライアン・フェリーが「Don't Stop The Dance」のリミックスEPを10月発売、全曲フル試聴可
(amass)
"DON’T STOP THE DANCE (TODD TERJE REMIX)"

こちらは原曲も。この曲です。CMにも使われていたそうです。

 この他にもたくさんのリエディット仕事をしている。いやほんと、若いのに音楽知ってますわ。

"Todd Terje - Greatest Remixes Pt 1 (Compilation)"
グッドなお仕事はこちらでチェック。冒頭ホセ・ゴンザレス(JOSE GONZALEZ)のリミックスは金字塔と呼ぶにふさわしい傑作!

2014年4月7日月曜日

GIORGIO MORODER VS. I-ROBOTS "UTOPIA (ME GIORGIO)"

 表記をマイナー・チェンジ。人名に関しては、カタカナ化可能なものはなるべくカタカナとアルファベットを両方表記しようかと。海外のブログで人名だけ日本語で書いてある、ってあんまりないですし。
 まあ、海外のブログなんざ読みませんが。
 曲のタイトルは原則アルファベット表記のみで良いかなと思っております。



 ということで早速、ジョルジオ・モロダー(GIORGIO MORODER)。
 シンセディスコのイノヴェイターです。ディスコダブ、バレアリック系が好きな人は全員大好きなのではないでしょうか。またカット・コピー(CUT COPY)などのロック、ポップアクトのシンセポップ化の青写真は彼の諸作にあると思います。いや、彼らはニュー・オーダー(NEW ORDER)"BLUE MONDAY"経由でしょうか。
 個人的には"モロダー"という語の響きがなんともたまりません。

 ジョルジオ・モロダーといえばイタロディスコの~と評されることが多いですね。今さらだけどイタロディスコってなんだろうという向きもあるかと思います。僕はその辺全く通じていないのでほぼ雰囲気で「イタロっぺえな」などと言っています。

特徴としてはBPM120前後のミドル・テンポなディスコ・トラックにアナログ・シンセサイザ−を多用したメランコリックかつ感傷的な旋律が印象的なものが多い。
(THEME FROM ITALO DISCO http://www.jetsetrecords.net/feature/34 )

 このJET SET FEATURE ARTICLEの説明がほぼ的を得ていると思っています。個人的にはドナ・サマー(DONNA SUMMER)の"I FEEL LOVE"、それからアレクサンダー・ロボトニック(ALEXANDER ROBOTNICK)の"PROBLEMES D'AMOUR"がイタロディスコっぽいイタロディスコだと思っています。


 さて本作はシンセディスコ古典、モロダー先生の『FROM HERE TO ETERNITY』(1977)の一曲をアイ・ロボッツ(I-ROBOTS)がリエディットを施したものです。
GIORGIO MORODER "UTOPIA"


 逞しいシンセベース、爽やかもあり、同時に哀愁も漂うアルペジオフレーズ、透明感のあるコーラスに導かれて気分が昂揚する美しいトラックです。ただ惜しむらくは約3分半という短い曲の長さです。それを今回7分近くにまで尺を伸ばしたのが今回のリエディットです。
 原曲に忠実なリエディットで曲のイメージのまま難なくDJプレイに落とし込める素敵な内容です。また、曲の時間が伸びたことでじわじわとくる昂揚感を堪能できるとも思います。
 「基本的には尺が伸びただけなのになんだかオリジナルよりも良いかもしれない」、良いリエディットの証です。

GIORGIO MORODER VS. I-ROBOTS "UTOPIA ME GIORGIO"

 あらためて聞くとホアン・アトキンス(JUAN ATKINS)などにも影響を与えていそうですね。

 さて、アイ・ロボッツとは。ジャンルカ・パンドゥロ(GIANLUCA PANDULLO)によるプロジェクトで、僕の英語読解力によると、80年代初頭からブラックミュージックのほかにクラウトロックやエレクトロニックサウンドを織り交ぜたプレイをしていたそうです。というとリアルタイムでモロダー先生すげーとか言ってたかもしれませんな。

 因みに[OPILEC]というレーベル、デリック・メイ(DERRICK MAY)やホアン・アトキンスのリミックスも出しているんですね。なかなか胡散臭いですが、注目です。

2014年4月3日木曜日

PRINS THOMAS 『PRINS THOMAS 2』

 昨日FRANKIE KNUCKLESが亡くなられたそうです。僕の好きな音楽の礎を築いた人の早いお別れ。冥福をお祈りします。

 ノルディック・ディスコ。RUNE LINDBARK、BJORN TORSKEやMUNGOLIAN JET SET(DJ STRANGE FRUIT)、LINDSTROMなどなど。
 最近最も勢いのあるのはTODD TERJEでしょうか。[SMALLTOWN SUPERSOUND]から、のち[OLSEN(TODD TERJE自身のレーベル)]から再発された「IT'S THE ALPS EP」は累計で1万枚以上売り上げたそうです(日本のとあるディストリビューターから聞いた話)。300-500枚限定プレス、という12インチが多い中でこの数字は破格です。

 今回はTODD TERJEではないです。


 
 ROYKSOPPなどにも感じられる可愛らしくドリーミィなメロディやプログレ、サイケデリック・ロックからの影響、ディスコNOTディスコなスタイルなどディスコダブ-NU DISCOシーンの形成に多大な影響を与えている北欧ディスコサウンドの重要人物PRINS THOMASのセカンドアルバム。


 リリースは彼自身のレーベル[FULL PUPP]からです。PRINS THOMASはこの界隈でもロックテイストが強いのが特長で『ZERO SET II』のリエディットなどにそのスタイルは顕著です。また『COSMO GALACTIC PRISM』や『COSMANOVA IV』などでは一般的なディスコの範疇から大いに逸脱した素晴らしいミックスアルバムを発表しています。



 セルフタイトルであるファーストアルバムでもサイケデリック・ロックやニューエイジなどの空気感を充満したダンスミュージックから程よく距離ををとったサイケデリックでヒプノティックなアルバムです。密林系っす。

 たいしてこの『2』はダンスミュージックに寄った作品といえるでしょう。まず、BPMがハウシーです(こんな日本語表現て)。110-120付近、ディスコでは王道のピッチです。

 B1にしてハイライト、"BOBLE TEKNO"はツッタカツッタカ言わしてるマーチングドラム的なスネアがPLASTIKMANのクラシック"SPASTIK"を思い出させます。PRINS THOMASはそこにロックでミニマルなベースラインと美しいフレーズを重ねていきます。"SPASTIK"はフリークアウトですが"BOBLE TEKNO"は<寸止め系>かしら。
 アルバムには同曲のバージョン違いも収録されておりそちらはメロディを排してトバし系のエフェクトを散りばめたマッド仕様です。これら曲や"FLAU PAPPADANS"などはPT流のミニマルテクノといった趣きで、これまでの作風にはそこまで目立っていなかった要素といえるでしょう。

 美しいメロディといえばA1"SYMFONISK"も白眉です。ストリングスが優雅に舞う、どこか牧歌的な雰囲気も漂うディスコトラック。ビートもベースも入っているが、その分「曲の進行方向」がはっきりしているのでゆったりとした気分になります。アンビエント解釈も可能、冒頭曲ながらパーティの締めくくりにかかって欲しい類いの名曲でございます。
"SYMFONISK"


 メロディがなく、ドラムとパーカッションでドライヴするサイケデリック・エスノトラックC1"BOM BOM"はピーク前にフロアのテンションをぐいっと上げてくれそうなグルーヴ・チューン。個人的には大好物ですわ。メロディがないので繫ぎやすいでしょうし(ド素人の感想)。

 ブラスのフレーズとボイスサンプルがファニーな印象を与えるD1"TJUKKOAS PA  KARUSSEL(カタカナ化できねぇ)"もループの中にユーモアと狂気をたたえたトラックといえるでしょう。ハイライトとは言いませんが、PTの魅力がじわりと滲んできます。


 ディスコに端を発するハウス、テクノのダンスミュージックとしての機能性に着目し、そこからもたらされる陶酔感をキャッチして曲に仕上げた職人の手腕が素晴らしいです。またベースラインのそこかしこに"ロックぽさ"を残しているため、サイケロック好きなボンクラ諸兄にもオススメ出来るアルバムです。
 PRINS THOMAS、はじめの一歩はファーストよりこちらかと。

 余談ですがDLできるボートラ2曲がまたいい。これが別の12"になってるわけで。うわぁ。

2014年4月1日火曜日

PANORAM 『EVERYONE IS A DOOR』

 昨日書いた調査捕鯨の判決が出ました。南極海での調査捕鯨は中止せよという判決でした。僕はなんとなく日本側の勝利(?)に終わるのでは、と思っていたので少し意外だという印象を受けました。ただ、ニュースを見る限りでは「南極海での」捕鯨を中止する命令のため、太平洋での調査捕鯨は続行されるようです。これも中止まで時間の問題かもしれません。
 この辺は時代の趨勢を感じます。禁煙・嫌煙ムードと大した差はないでしょう。時代の気分です。生体数とか、実はそんなに関係ない。



 DJ HARVEYの『XMIX』の冒頭を飾ったことで注目を集めたPANORAMによるファーストアルバムです。リリースは[FIRECRACKER]から。先日VAKULAのファーストアルバムもリリースしたレーベルですね。

 未だにアーティストの詳細がわからないままです。ここで全曲試聴できます。

 聴いた感触を文字にすれば"乙女の柔肌のような"。そんな詩的な表現が思わず口をつく滑らかなメロディです。特にA面での少しレトロでチープな音色が"あどけなさ"を感じさせ、それゆえ「乙女の」、というイメージが思い浮かんだのかもしれません。

 なかなか噛み砕けない作品です。イントロから冒頭曲に至る流れではそれこそ柔らかなメロディが織りなす甘美なダウンテンポが楽しめますが、短いインタールードなどを挟んだA面はどちらかというと散漫な印象を与えます。
 CLARK(CHRIS CLARK)を思い出させるメロディからもわかるようにエレクトロニカ、IDM、また当世風のヴェイパーウェイヴ的な意匠もあるのですが(全く余談だが、個人的にヴェイパーウェイヴと呼ばれる作品の殆どに"出来損ない"以上の印象を持つことが出来ない)。ONEOHTRIX POINT NEVERの作風にも近いものがある。しかしそういった断片が何かしら形作る前に姿が霞んでいってしまうといえばいいでしょうか。
 メロディもビートもくっきりしていますがそれとは関係なく「音楽が始まる前に終わる」というような気がします。甘美な瞬間はいくらでもあるのです。がしかし。

 自分の耳が着地点を見出せないままA面からB面に行きます。ここでグッと焦点が定まってきます。B1の麗しいエレクトロニカ・ブレイクビーツに耳がそばだちます。そこからB2のシンプルなピアノ小品が素晴らしいです。乙女の柔肌だった印象は次第にジェントルなセクシーさに変わってきます。夜にしっとりと寄り添うサウンドトラック、微睡むチルアウト。優雅に、少しずつ暗い海に沈み込んでいくような。やや歪んだメロディはBOARDS OF CANADAでしょうか。
(B2"1212121212"は見つからず)


 HARVEYのミックス採用の流れでアルバムもサイケ成分もりもりになるだろうと勝手に期待しておりましたが、その期待は肩透かしとなりました。正直その勝手な期待のせいでまだこのアルバムの真価は見えていません。ゆるゆる聴き続けたい、そういう懐の深さはありそうです。

2014年3月25日火曜日

THE ANDREWS SISTERS『THE VERY BEST OF ANDREWS SISTERS』


 完全無欠のエンターテインメントであり、峻厳なプロフェッショナル意識が貫かれたアートでもある。などと書くといかめしく、むしろ「お、カルトなレコードか!?」と期待させてしまうかもしれませんが、真逆です。楽しい音楽がひたすら流れている。

ふにふにぐずったりおっぱいを飲んだりしている長子を尻目にこれを書いていますo)))

 以前Facebookにて教えていただいたTHE ANDREWS SISTERS。正確に言うと妙ちくりんなガールズコーラスグループの動画をシェアした際にいただいたコメントにてその名前を知りました。
↑ちなみこれがシェアした動画。途中の踊りから、ヤバい。THE ANDREWS SISTERSではありません。

(Audio-Visual Trivia)

 第二次大戦中、戦地の兵士たちを慰問する公演にて人気を博した三姉妹によるコーラスグループです。実際に人気が爆発したのは戦後、1950-1960年代のようです(上記サイトより)。
 こちらの冒頭に収録されている"BOOGIE WOOGIE BUGLE BOY"は10年ほど前に聴いていた記憶があります。戦前-戦後のポップスをコンパイルしたアルバムに収録されておりました。タイトルが思い出せません。"CHINESE YODEL(このタイトルもうろ覚え)"など、当時は娯楽として成立していたのに時を経て狂気が滲み出てきたような素敵な楽曲も収録されていたので、Kくん、タイトル教えてください(余談&私信)。

 さて、冒頭に長子こいたことを書きました。このアルバムから彼女たちのアイデンティティというか、"人間らしさ"というのが見えてこないんですね。
 もちろん良い意味で、です。
 "ヤンキー〜♪"くらいしか聞き取れなかったので実際の歌詞は知りませんが、おそらく彼女たちの苦悩が描かれているということはないと思います。とかく陰鬱な感情であったり、政治状況であったり、ポストインターネット・アートにおける過剰な並列化であったりを描くことを"真実味がある"と思い込んでいる僕にとって、この曲たちは危なっかしいまでに楽しいです。
 真実味を演出するような表現(叫び、過剰なアンプリファイ etc.)はここにありません。無垢や純粋という表現が正しいかはわかりませんが、スイングジャズやブルース、カリプソをバックに元気に歌うその音が目指しているのは楽しくなることのみ!ではなかろうかと思います。



 僕たちが普段使う"アート"という言葉とは距離がありそうですが、完全なポップスを目指す姿はアートと呼ぶにふさわしかろうと思います。



 何度でも書きますが、もう音が楽しそうです。いいなぁ。



2014年2月14日金曜日

BOOT & TAX 「ACIDO EP」


独特のセンスが他の追随を許さない、グラスゴウのサイケデリックディスコDJチームOPTIMO。それの片割れJD TWITCHが新しいレーベル[OPTIMO TRAX]をキックオフさせています。
・[OPTIMO TRAX]のリリース一覧
ロウハウス勢とも共振しそうですが、レーベルオーナーのセンスも滲み出て90Sユーロテクノを現代に蘇らせています。品番002では90年代のトラックをコンパイルしています。

品番004はイタリアはミラノのCRISTIAN CROCEとCLAUDIO BRIOSCHIのコンビ、BOOT & TAXのクセの強いフロアトラック集です。なんというかこの二人もOPTIMOがすんごい好きそう。ニューウェイヴ趣味とか。

試聴

A1 ACIDじゃなくて"ACIDOアシドォ"のボイスサンプルがナイス。タイトル通りのアシッドトラック。80Sシカゴアシッドのマナーで鳴らされるロウトラック。

A2 どこか60年代のサイケデリックロックの香り漂うキーボード?の音色とそれをなぞるベース、エフェクトが掛けられてひん曲がったラッパかギターの音(←...)。キックドラムが入ってすぐのドラムブレイクがしびれます。白眉です。都会のシャレた不良のBGMと言えばよろしいでしょうか。レコ屋さんの紹介などを読むとB1がハイライトのようですが、個人的にはこれがベストです。
A2"EGON"



B1 ポストパンクを感じさせるベースラインがループしグイグイ押してくるニューウェイヴディスコチューン。"ハッハッハッハー"という女性の叫び声、パーカッションもどこか[ZE]っぽい雰囲気です。「3RD FACEによる'04年傑作"CANTO DELLA LIBERTA"やOOIOOの作品で使われてきたのと同じあの某イタリア産サントラ音源をネタに用いながら(http://lighthouserecords.jp/?pid=67364878)」ということなので有名なネタなのでしょうか。


ということで3RD FACEなるユニットをば。
B2 はそうしたNW感と現代の何周目かのトライバル〜エスノテイストが合わさったトラック。ちょっと西部劇っぽいです。聞こえて来る男の声はイタリア語っぽいからかもしれません。 それから、これからおそらくリリースされる予定だろうこれ。品番006。このレーベル知ったきっかけがこれでした。いやほんとグレイト。LUCA LOZANOのリリースが楽しみです。

2014年2月11日火曜日

ANASTENARIA『MUSIC OF THE FIREWALKERS』


 日本のヤクザ映画のサントラをコンパイルしたりアフリカのゲットービート"シャンガーン"を紹介したり、SHACKLETONがらみのリリースをしたり、の筋金入りの変態レーベル&レコードショップ[HONEST JON'S]が配給する新レーベル[KEMAL]の第1弾です。

 [HONEST JON'S]の我が道を突っ走るチョイスとセンスに心酔する身としては見逃せません。
 内容はギリシャ正教に伝わる火渡りの儀式のフィールドレコーディングとリミックス(!)という、やはり珍味心をわしゃわしゃとくすぐってくれる内容です。しかもリミキサーはPETE SWANSONとVATICAN SHADOWのお二方。なんとなくギリシャ正教的罰(バチ)が当たりそうなラインナップです。

●√:試聴。

 ヴァイオイリン、フィドルの音色とシンプルな太鼓。人々の声、トラックの音(?)。朴訥とした、それでいてトランス感も漂う独特の味わい。荘厳な雰囲気というのはあまり感じないのですが、トリップ感、、いや違う、日常化から数センチずれた異世界にゆるゆるふらふら迷い込んで行くような快感。

 リミックスはどヘヴィなインダストリアルリミックスのPS、ノイズブリブリのVSということで通常運転です。PSは特に、最近のオリジナルよりも焦点が定まっているような感じでドスの効き方も堂に入っています。
 PSのリミックスを聴く限り、45回転かと思われます。オリジナル収録のディスクが33回転、リミックスのディスクが45回転かと。いや、VSの方は33回転かも。いやこれもうわかんないですね。ふと、オリジナルの方を45回転にすると、いけなくもない。途中に入っている人の声で回転数の見当がつくけど、それがなかったら45回転で聴いていたかもしれません。

もうちょい聞き込んでみますわ。

因みにレーベル第2弾がTHIS HEATのCHARLES HAYWARD(リイシュー)。このチョイスがもう最高です。
これも気になるな〜。