2014年5月1日木曜日

A SILVER MT. ZION 『HE HAS LEFT ALONE BUT SHAFTS OF LIGHT SOMETIMES GRACE THE CORNER OF OUR ROOMS』

 いらっとくるブログから思いを巡らせるが増えているような気がします。良くない傾向です。心のどこかで上から目線で語りたい欲求があるのでしょう。にっこり、日暮里スルーするようにします。

 今回はA SILVER MT. ZIONの『HE HAS L(後略)』です。母体であるGODSPEED YOU! BLACK EMPEROR(以下GY!BE)主宰のレーベル[CONSTELLATION]から2000年にリリースされています。

 A SILVER MT. ZIONはGY!BEのエフリン・メナック(EFRIM MENUCK)、ティエリー・アマー(THIRRY AMAR)、ソフィー・トゥルドー(SOPHIE TRUDEAU)の3人が結成したものです。
ちなみにGY!BEはセットファイヤーなんちゃらみたいなのとか多数の別プロジェクトがあります。(参考にオフィシャルサイト

 GY!BEについて少しだけ触れます。モントリオールのポストロックバンドでギターやドラム、ベースに加えヴァイオリンなどのストリングセクションもある大所帯です。
 「重厚かつ繊細で美しいアンサンブルが〜」など、書こうと思えばポストロックのテンプレ的なことは書けますが、彼らの特徴は<全曲基本的にクレッシェンド、デクレッシェンド>です。同じフレーズを繰り返し、別のパートのフレーズが重なり、別のパートが…と、音が次第に分厚くなりハイライトへ向かうスタイル。などと書くとしょぼそうですが徐々にスケールアップして最後に描かれる壮大なサウンドスケープとカタルシスは筆舌に尽くしがたい、素晴らしいものです。以降のインストバンドやエレクトロニカアーティストにも多大な影響を与えております。
 ポストロックバンドと呼ばれる集団で彼ら以上のバンドはいない、などと言ってしまっても構わないくらいです。ミニマルミュージックの圧倒的な破壊力がここにはあります。
"GY!BE、それは地上で最も受けたい暴力"


 90年代後半、体感的には00年代のはじめ、GY!BEは避けては通れぬ存在だったと思います。
避けて通れない感が伝わるだろう、ブログブーム以前のシンプルな個人サイト
(好感度大。移設先のブログではすでに書いていないようですが是非また書いてほしいですね。あとURLが業者級のいい文字の並び。)
 少なくとも「こういうレヴューサイトを作らないと」と思わせる佇まいが当時はありました。
 ええ、僕も手書きHTMLでフレーム組んでほぼ同じレヴューサイトやってましたし。

 当時の音楽雑誌NMEは今のピッチフォークよりも影響力の強いメディアだったのですが、そんな雑誌が表紙にババンと据えた彼らはポップミュージックの、というよりはインディロック、オルタナティブ業界の"希望"そのものだったと思います。

 『YANQUI U.X.O.』のジャケットで音楽メジャーと軍需産業の繋がりを図示したのは「そこまでやるとジョークにしか見えない」というものではありましたが、それでもなお徹底した反コマーシャル、反資本主義の姿勢はシリアスな音の世界観と絶妙にマッチしたものでした。姿勢を含めた、"存在自体がおそろしく格好良いバンド"ですね。

ele-king『ALLELUJAH! DON'T BEND! ASCEND!』のレビューもなんかかっこいい。
(ネタ的にエレキングを使うのは申し訳ないですが、ビョーン・トシュケ『KOKNING』のレビューとの温度差はやっぱあるよな。)

 話がだいぶ逸れました。今回紹介するアルバムに話を戻します。
個人的には最も好きなジャケットのひとつです。


 本体のスケール感と比べれば「小品」の印象も受ける作品です。作品はポストロックのジャンルに入りますが、現在だったら<ポストクラシカル>と呼ばれると思います。
 ピアノとヴァイオリン、コントラバスがシンプルに鳴っています。曲調は暗くいつまでも晴れない曇天のようです。そして高貴で美しく、哀しい。

 A2"SIT IN THE MIDDLE OF THREE GALLOPING DOGS"ではドラムがより前面にでて所謂ポストロック的に聞こえます。ここでもヴァイオリンのフレーズが丹念にループされています。

 ストリングスの音色を映画サントラで聴く機会が多いせいかもしれませんが、この作品も映画を観ているような気分になります。
 —夜。石畳の路地裏。昨日から降り続ける弱い雨。石畳に出来た水たまりが街灯を鈍く反射させる。ポケットの煙草はすでにくしゃくしゃだ。白い息を手に当てながら地面に足音を打ち付けるー
みたいな感じです。皆さんはどんな情景を思い浮かべるのでしょうか。

 アルバムを通し峻厳な美意識が貫かれており、アルバムを通して聴くことを要求してくる作品です。アルバムという形態に必要性を感じられるのはえてして素晴らしい作品が多いです。
"SIT IN THE MIDDLE OF THREE GALLOPING DOGS"
かっこいいポストロックトラック



"13 ANGELS STANDING GUARD 'ROUD THE  SIDE OF YOUR BED"


アルバム全曲はこちらから。

『Godspeed You Black Emperor.1976』

GY!BEのバンド名元ネタ映画がYOUTUBEありました\(^o^)/

0 件のコメント:

コメントを投稿