2021年12月12日日曜日

『死にたく〜』を読んだ。

 李龍徳『死にたくなったら電話して』を読んだ。文庫版。


ラストシーンが印象的だったんで書きます。ネタバレするぞ!



...


(以下引用)

「結婚とか、いつかは俺たちも俺たちも・・・・・・」

「結婚なんて無理ですよ」と大儀そうに初美は言い放つ。これまでにない突っぱねる口調だった。

「は? なんで?」と少し怯んだ徳山はかじりつく。

(中略)

「だって、うちの親、徳山さんが“在日”なのが引っかかってるみたいで」「は?」

(引用ここまで)


 これがかなりラストに近い、痩せ細った主人公二人の会話だ。作中においてここまで徳山が在日だという言及は全くない。


 いや、おじさん驚きました。死にそうな二人が終盤に交わす言葉だよ。ここは甘酸っぺえポエムが挿入されるとこじゃないすか。それがここまで全く触れられなかった在日云々がいきなり入ってきて。

 徳山も「いやそんなん・・・・・・ いちいちそんなん、(初美の両親に)言わんでもよかったのに・・・・・・」と慌てふためいたあとに沈み込んで。


 たぶん初美にとって断る理由はなんでも良くて、けど徳山が絶対諦める理由をチョイスしたんだと思う。徳山を効果的に絶望させるっつうか。


 この場面は読んでて混乱した。で、私もそしておそらく多くの読者もこう思ったと思う——「在日関係ないじゃん!」(なんせここまで言及がないしね)

 たぶん、著者の技術に見事にハマってしまったんだと思う。この唐突さが在日韓国人と在日問題(問題というのか)のリアルな距離感なのだろうか。


 梯子を外される感じといえば良いだろうか。在日韓国人は仕事や恋愛などのコミュニケーションをとっている途中で、いきなり在日問題がぶち込まれることがあるのではないだろうか。話の前後が全くつながらないレベルで在日が問題になってしまう。

 私の驚きはそのまま在日韓国人の驚きの疑似体験だったんじゃないだろうか。あまり憶測で書いてはいけないか。


 とまあ小説の内容とは別のところで感想が膨らんでしまった。

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