2014年4月10日木曜日

ATARI TEENAGE RIOTのライヴに行った。

 結局、ライヴ本編以外のことばかり書きました。


 アタリ・ティーンエイジ・ライオット(ATARI TEENAGE RIOT)の公演を見る機会に恵まれました。正直、アタリの人気度はドクター・ニシムラと同等くらいに考えていましたが、その目算は大いに誤っていました。両者に申し訳ない気持ちでいっぱいです。
 オープン前から人が並び、会場の熱気は高かったです。

 かつて[DIGITAL HARDCORE RECORDINGS]のクリップ集(VHS)を買うくらいには彼らに入れ込んでいた僕ですが、長い間リリースがなかったために興味は薄らいでいました。ALEC EMPIREのソロ作にしても『INTELLIGENCE AND SACRIFICE』以降のものは、ピンと来ませんでした。[STAUBGOLD]のミックスは良かったですなぁ。

 2011年リリースの『IS THIS HYPERREAL?』に関しては先行の"ACTIVATE"よりはアルバム中のアシッド・ハウス的なアプローチに新鮮さを感じました。しかしアルバムの印象は薄いままでした。

 ということで、メンバーが表れた時も「アレックと遠藤と、メンディ(ハニンは?)」と思ってしまったほどの隔世の感を持っておじさんは公演を見ていました。ちなみに亡くなったカール・クラック(CARL CRACK)に変わってマイクを握ったのはCX・キッドトロニック(CX KIDTRONIK)という、いいネーミングセンスを持った男です。…ではありませんでした。すみません。ラウディ・スーパースター(Rowdy Superstar)という方だそうです。
 『60 SECOND〜』以降遠ざかっていたファンはこちらをチェックしましょう。僕だけですか。
 現役を退いていたハニンが声が出なくなっていて、遠藤さんがボーカルに収まったというエピソードも。
新曲の“Activate”を録ろうとしたとき、次の問題が起こった。ハニン・エライアスの声が出なかったんだ。彼女は10年近く現場から離れていたから、以前のように声が出ないということに、レコーディングの段階になって気づいた(笑)
(上記インタヴューより)

 どの程度期待していいかわからず「"REVOLUTION ACTION"が聴ければ良いかなぁ」などと思っていました。
 あと"TOO DEAD FOR ME"と"KIDS ARE UNITED"と"HEATWAVE"と(中略)……"SEX LAW PENETRATION"聴きてぇ!…典型的な質の悪いオールドファンです。

 そうした中途半端な期待は登場前のSEで良い方向に裏切られました。彼ら自身の曲も聞こえましたが、次第にアシッドハウス、オールドスクーリーなレイヴサウンドに切り替わってきたわけですよ。
 [L.I.E.S.]や[NIGHTSLUGS]にも通じるような不機嫌なイーブンキックを聞く限り、アレックは熱心な音楽リスナーなのだろうと憶測してしまいます。上記のインタヴューでは「最近ので面白いのはあんまりない」と言っていましたが、BOOMKATとかマメにチェックしているかもしれません。さりげなくシーンへの目配せがなされており、感心しました。アジテーターは現状を利用するのです。
 1992年、当初の姿を変えたレイヴへの懐疑からATRは始動します。そんなことを考えると感慨深い気もします。

 冒頭数分のアレックのプレイにも驚いた。ディープで伸びやかなエレクトロニクス。クリス&コージー(CHRIS & COSEY)を思わせるそのサウンドに不覚にも「そのまま行け!」と思ってしまいました。ちなみにどことなく文系の匂いがするアレックの二の腕はそのままだった(むっちり♡)ので驚きませんでした。
CHRIS & COSEY "WALKING THROUGH HEAVEN" 冒頭部分はほんとこんな感じだった。

 イントロから新作"RESET"へ。ニック・エンドウ(NICK ENDO)が、金切り声の中にも猫系の甘ったるさを潜ませたハニン唱法を見事に体得していたのに驚きまた。アルバムを来た時はハニンが歌っているものだと思っていましたよ。

 ATRの魅力はそのキャッチーなメロディにあります。とても『LOW ON ICE』を作った人がやっているとは思えないくらいにキャッチーです。かつて<ブレイクビーツの異端児>と呼ばれた男の作る、特徴的な高速ビートは胸がすくほど暴力的ですがそれに乗っかるのはメロディックハードコアのそれです。メタリックなリフのループもまたしかり。
 この点は「アジテーションは何をもってしてもまず聴かれなければならない」という姿勢の表れであり、自分たちの音をキッズになんとしても届けるという執念すら感じられます。
 時として、トランス、しかもフルオン〜モーニング系(そういう言葉があるらしいですよ)のようなあけすけなメロディも飛び出します。これは、「"駄目になったレイヴ"を逆に利用してやる」というアイロニックなユーモアも入っているんじゃないかと、やっぱり勝手に思っているところです。
さすがアジテーター20年選手。

 そして今回ライヴを聴いていてその"聴き易さ"が印象的でした。ヘヴィなキックはもちろんのこと、時にノイズをぶちまけるがそれさえも音の粒が立っていて、どういうサウンド鳴っているのかが把握できます。以前見たヘアスタのライヴでも感じた聴かせるノイズです。
 かつて「何もかもすべてが政治的だ。たとえセックスをしているときでも」というグドルン・エンスリン(GUDRUN ENSLLIN)の言葉を好んで引用したアレックにとって、無駄にする音など一つもない、ということかもしれません。この辺は上にも書いたキャッチーであることへの信条とも繋がっているのでしょう。メルツバウとブリブリのノイズセッションやったりもしてますが、まあそれはそれで。
 これらはもちろんメンバー以外の音作りに携わる裏方の努力あってのものですが、ATRのサウンドへの精緻なアプローチは意外でもありました。ライヴ巧者です。

 単純なファンなので"REVOLUTION ACTION"が聴けて大満足。ゆえにライヴは文句なし。かっこよかった。
ほんとこのまんま。最高。


高速ビートの暴動騒ぎの中にもモダンな音や様々なアプローチ、サウンドに対する職人的なこだわりがあり、自作、あるいはソロ作への期待が高まりました。潜在愛聴者が多い『LOW ON ICE』の系譜に連なるような沈み込むようなトリップアルバムに期待です。それこそ[BLACKEST EVER BLACK]から出るようなそれを。

 そして終演後、心地よい興奮に浮かれて物販でLOLITA STORMのLPを買ってしまいました。
ずっと探してたぜ!!!!!!何しに行ったんだ、俺。

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