2019年8月27日火曜日

SURGEON『Fabric 53』

テクノハウスの名門ミックスシリーズFabric。四つ打ち系の"Fabric"とブレイクビーツ系の"Fabric Live"の2系統があって共にシリーズ100を以って終了したシリーズです。


FabricのベストMIX CD 10選

とこんな記事もございました。どの作品も一定以上のクオリティは保証されているのでどれ買っても問題ないです。
Ben UFOのミックスは久しぶりに聞いたら当時の興奮が蘇らず(個人の感想です)...。ロウハウスとかベースミュージックとかラフな音像に興奮したものですが、加齢によるものかもしれない...!

それから自分の曲だけを使ったミックスって、個人的には寂しく感じてしまうんですよね。このシリーズだとヴィラロボス、シャクルトン、オマー・Sあたりですか。DJミックスってあっちゃこっちゃから持ってきて統一感というかストーリーというか面白みを作り出すのが醍醐味だと思うんです。それに、たとえばヴィラロボスは実際の現場ではけっこうディスコっぽいテイストの曲もかけてて、むしろそういうの聞きたいです。

そういう意味ではDJは猥雑ながら繊細な芸術だと思います。

はてさて



恥ずかしながら聞いたことのない作品の方が多いんですが、その中で気に入っているものといえばサージョン(SURGEON)『Fabric 53』です。


サージョンというと、2000年前後のカリッカリのハードミニマルの印象が強いです。正直、全部同じに聴こえましたわ笑 ですのでこの作品も往時のハードミニマルを思わせる909の歪んだキックが吹き荒れるミックスかと思いきや、ナウいミックスになっています。

これのリリース後ブリティッシュ・マーダー・ボーイズの再発があったりしましたんで、その後のダークなハードミニマルのルネッサンスと興隆を準備した作品、かもしれません。

イントロ、蔵前駅の構内アナウンスからスタート。日本人としてはニヤリとしてしまいますが、外国の方だと見知らぬ土地への旅を想起するでしょうか。

アルバムを通して驚くのがミックスの上手さ。プロに向かって「じょうずですね」というのも如何なものかと思うのですが、スタートからトラック8くらいまでがあっという間。実際曲あたりの時間は短いんですけど、そうではなくて「やべえ、聞き入ってた」と我に帰るような感覚があります。
テクノ界隈では特にディープなグルーヴをして「ハメる/ハマる」と表現しますが、まさにそれです。序盤の隙のないミキシングで客の聴覚を完全にロックします。

また図太くて張りのあるキックが印象的です。クリアだけどデカイ低音。この辺、不快にならないのはDJの手腕によるところかも知れません。

ディープで機能的ともいえるビートが強く印象に残りますがアトモスフェリックで浮遊感のあるウワモノが所々で差し込まれる演出がまた心憎いです。なんとなくこれで「息継ぎできる感じ」というか。まあ、途中で喘ぎ声なんかも聞こえるんすけどね。

M12、13、14あたりでステッパーズライクなビートが差し込まれます。ここ興奮。ここまでも4つ打ちを基調にしながらも90年代風のブレイクビーツハウスっぽいビートが混じりつつも直線的なビートでリスナーのテンションを上げてきたからのつんのめったダブステップが効きます。やっぱうめえわ。でこの辺はいわゆるハードミニマルに収まらない音の採用の仕方をしてると思います。

トラック数は30。テクノのミックスとしては異例ともいえる多さです。しっかりオリジナル曲を確認してないからあれですが、曲をパーツのように扱うがゆえにCDのトラック数としては増える傾向にあるのかもしれません。

テクノに「持ってかれる感覚」を味わいたい、そんなアナタに最適な一枚でございます。

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