2022年1月31日月曜日

ドライブと憂鬱

 何かに急かされるようにタイプする。今日は酒を抜いているのでタバコを吸う気も起こらないとてもいい夜だ。これなら酒をやめてもいいんじゃないかと思う。

 仕事を終えて「ブルシット・ジョブ」という言葉を頭の中で繰り返しながら車に乗り込む。2010年製のエクストレイル。フォグランプさえなければシンプルで角張っていて最高だが、私の中古車は無駄な灯りを背負っている。乗り心地は嫌いじゃない。燃費は悪い。

 『アフターシックスジャンクション』のネタががピンとこない日はハードディスクに入れた200枚のアルバムをランダムに流す。帰途に就くたびにレコードを聞いていないことと活字を読んでいないことに焦る。

 たまに思いついて音楽データを買うがスマートフォンで音楽を聴く習慣がないので結局買ったことも忘れてしまう。音楽サブスクリプションも、何だか味気ないのでやったこともない。

 ガソリンスタンドを居抜きしたレンタカー屋の角を曲がる頃にはタバコを吸い終わり今日はなにを飲もうか考えている。朝は確か「今日こそ酒を抜こう」と決心していたのに、それもこれもブルシット・ジョブが精神を乾かすからいけない。精神に潤いを与えるには適切なアルコールが必要なのだ。

 あのコンビニ、もう一つのコンビニ、あのスーパー、どこに行くか。晩飯の鶏はもも肉にするか胸肉にするか。いっそ一度も行ったことのないスーパーに行こうかといつも思うが、帰宅から就寝の時間を逆算すると尻込みして結局いつもの店になってしまう。

 ぱっと気の利いた返しができればいいのに。仕事のやり取りを思い出して悔しくなる。退職日から逆算していつキレるべきか検討がつけばいいが思うようにはいかない。我慢がいつものクセだ。いや大丈夫、私は今、息を潜めているんだ。牙を、武器を隠しているのだ。そう考えたらむしろ面白いじゃないか。くそ。

 ランダム再生した曲がどれもこれも気に食わない。自分で曲を入れたはずなのに聴きたい曲が見つからない。気持ちが上滑りしている。給油もしなければならないが車から降りるのも面倒だ。

 こうなると喉はもうアルコールのためだけに開かれた器官と化している。アルコールさえ入っていれば何でも構わない。読み残した短編集のことが頭をよぎる。

 今日は酒を飲んでいない。酒なんて飲まないに越したことはない。

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