2014年5月10日土曜日

荒川版アルスラーン戦記

 田中芳樹大先生の『アルスラーン戦記』が荒川弘によってコミカライズされています。現在2巻まで発売されています。
栞付き




 原作は中世ペルシアをベースに書かれたファンタジーです。大河ファンタジーといってもいいかもしれません。とか言いながら具体的にどの王朝の時代を下敷きにしたか、などは知らないです。また「あ、はいササン朝です」と言われてイメージが膨らむわけでもないのですが(…)

 「奴隷」が「ゴラーム」、「大将軍」が「エーラーン」、あと「万騎長」に「マルズバーン」というルビが振ってあります。もうおっさんなのでこれが読みに辛くてつい「ダイショウグン」、「バンキチョウ」など勝手に読んでしまっています(万騎長にかんしては日本語の正しい読み方もわからない)。
 個人的にはエーラーンとかが読みづらいため、そこで読むのがつかえてしまうのですが、こういうのをしっかり読んでいくのが物語に没頭できるコツなのかも知れません。

 ストーリーは王道、正統派路線。初陣の戦で敗走した主人公(王太子)が仲間を増やして、、、というものですから破綻はありません。キャラクターや設定に感情移入して楽しむものだと思います。

 作画の荒川さんは武将を描くのが多分お好きな方なので出てくるキャラクターはかっこいいですが、少し牧歌的に見えてしまうきらいがあります。たぶん、物語のテイスト的にはもうちょっとクドいというか、グロいタッチが混じっていた方がマッチすると思います。そんなことは僕なんかが指摘するまでもないのですが、今後タッチが変化するか、あるいはしないのか、なんてことも楽しみです。

 少し前に"イマジナリーライン"というのが話題になっていました。時系列、行動の順番の漫画的表現、と言えば良いでしょうか。日本のマンガは右から左、上から下へと時間が経過します。
 簡単な例を挙げると、どこかへ行く場合はキャラが右から左へ移動する描写になり、どこかから帰って来る場合は左から右へ移動する描写になります。そうすると読んでいて「ああ、このキャラはどこかへ行くのだな」というのがわかって読みやすくなります。また時間の経過も通常右から左へ移動します。そうすると動作のすべてを描かなくても「キャラがこういう順番で動作をしたのだな」というのがわかるようになります。

 地味っちゃ地味な技術ではありますが、200ページ近い単行本の場合、こうした読みやすさ、言外(絵なので描外?)の説明は非常に大切です。

 少女マンガで1ページぶち抜きで号泣するキャラが立ち、周囲に関係キャラの様々な台詞が散りばめられていると戸惑ってしまうという経験は、マンガを読む人ならば一度は遭遇したことがあると思います。この戸惑いはイマジナリーラインの破綻が原因です。因果関係がはっきりしないままページを進めると作品内容までもやっとしてきます。

 ●ドラゴンボールの左と右と読みやすさの秘密
 ドラゴンボールを例にした解説です。鳥山明が天才なだけでなく、優秀な職人であることもわかっちゃいます。

 技術はストーリーとは別問題なのでは?とも思うかもしれませんが、読後感という言葉もあり、特に"絵"で勝負するマンガにあっては非常に重要な点だと思います。こういう点も楽しむと単行本の値段分くらい楽しめるんじゃないかなと思います。

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