ロバート・ジョンソン。27歳で死んだブルースマン。ええ、私"ブルーズ"って言えないもんですから。"ズ"って言ったら"ロバート・ジョンスン"て言わないといけなさそうじゃないですか。
伝説のブルースシンガーの生涯を当代きっての画力を誇る平本アキラが描く、最高だぜと思っていたのですが、4巻を最後に音沙汰がなくなったため「ああ、打ち切られたな」と勝手に思っていました。まあ、音楽好き漫画ファンにとっては重要な作品でありますが、地味な題材と言われればそんな気もしますし。
それが8年ぶりに新巻てなもんですから小躍りですよ。8年の間に4巻を買ったかどうかの記憶さえ曖昧になりいちかばちかで買いましたがその賭けには敗れました(ええ、ダブりました)。
5巻は逃走中に逃げ込んだジュークジョイントでRJが演奏をします。はじめは演奏をオナニーとまで言われてしまうのですが、右手を制御するのではなく"解放"することによって凄まじい演奏が繰り広げられます。この描写が圧倒的。客がRJの悪魔の右手に狂わされていくさまが実に生々しく描かれています。濃厚で悪夢的ですらあります。
僕は正直ここまでの体験をしたことがないな、と思いました。だからこのジュークジョイントで放たれた悪魔の音楽を僕は頭に描くことができませんでした。それは表現が悪いのではなくむしろ表現が過剰なまで狂おしいからです。この描写に音をつけられる人が羨ましいです。
熱狂する観客がいる一方で戦慄を覚える数人がいます。この音に魅せられるのは危険だと。
しかし狂宴は続きません。マクドナルド氏が放った猟犬に再びRJたちを襲います!そしてマクドナルド氏の狂気も次第に詳(つまび)らかになってくるのです...!!
濃厚で悪夢的 。この漫画の魅力は影の濃さ、作品全体を覆う暗さ、気色悪さ、底なし沼のような不気味さにあります。まさにコミック・ノワール。その晴れない暗さは音楽の横にはびこる人種差別やリンチの恐怖、"自由の国"の閉鎖性を感じさせます。だからこそ、そこから一時的にでも逃げるために黒人が狂ったようにブルースで盛り上がることに強い説得力を与えています。
この辺のイメージを助けてくれるのが「ウィスコンシン死の旅」かと。
・アメリカ全体が「病気」にかかっていた時代
・画像見れます。
濃い陰を平本アキラは執拗に描きます。エロコメ(監獄学園)だけやないんやで。僕たちが「クラプトンもストーンズも影響を受けた伝説の人」などと語るとき、「ブルースは過酷な人生を歩む黒人のスピリットをほにゃららら」などと語るとき、どこか陽気です。なんだかんだ言っても音楽談義ですし。平本はこうした気楽さを少しずつ黒く塗りつぶしていっているかのようです。
そしてなぜだかわからないけどその作業がとてもかっこいいです。
絶対ハッピーエンドで終わらない感じ、いいですよね。
次巻はいつになるのでしょう。非常に待ち遠しいです。
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