2015年9月16日水曜日

リ・エディットは基本的に改悪だけど、たまに例外もある。JAMES YUILL "THIS SWEET LOVE"

 クラブミュージックにはリミックス、リエディット、ダブ・バージョン、◯◯バージョン、アポカリプソ・ナウ・ミックスとかありますね。

 これらは基本的に原曲を踊りやすく、というか"踊る快楽"を長く引く伸ばすために編集されています。
リミックスが世界的に普及したきっかけは、1970年代後半のニューヨークにおけるディスコ・ブームであった。ファンクソウルのレコードの中で、ダンスフロアで踊っている人々に(踊りやすいという理由で)好まれる部分の演奏時間を何とかして引き延ばしたいと考えたディスクジョッキーたちが、当初は同じレコードを2枚用意し、それらを並べて置いたターンテーブルで若干の時間差を付けて再生し、ミキサーを用いて手作業でそれらのレコードの「延長したい部分」を交互にプレイしていたのであるが、やがて最初からDJが使いやすいように原曲を引き伸ばしたり、ヴォーカルを取り除いたり、踊りやすいブレイクの部分や音のパーツを強調したレコードが発売された。(Wikipedia「リミックス」 項)
単純に、同じピッチで尺が長いほうが踊っていて"ハマる"んですね。
 ちなみにノンビートにするなど踊ることを主眼としていない編集も存在します。アンビエントもフロアには必要なんす。

 で、上記の呼称の違いには何か意味があるかというとありません。言ったもん勝ちです。原曲に忠実なのがリエディットで、新しい音を足して作ったのがリミックスだ、というような言説もあるらしいのですが、例外も数多くあるので正確ではありません。

 さて、それなりの市民権を得ているリミックスですが、原曲より良いリミックス、リエディットはほぼ存在しません。これは皆さんも薄々感づいておられるのではないでしょうか。有名なのはレディオヘッド(RADIOHEAD)のリミックスはほんとしょぼいのが多いということでしょうか。この辺はなにか別の曲にレディオヘッドのサンプリングが入っていて、それがフロアで鳴ったときの意外性を楽しむのが正しいかと思います。だから買って家で聞いても大して面白くありません。

レディオヘッドのリミックス

 リエディットといえば帝王ハーヴィがインタヴューで「原曲の良いところを引き伸ばしただけだと面白くないから、それ以外の部分も入れる」みたいな極意を語っていましたが、"JUICY SUSHI"あたりはがっつりおいしいところだけ抜き出しているので「このおっさん絶対適当なこと言っただろ」と思っているところです。

 そんなリエディット業界ですが、中には原曲を超えた魅力を携えた作品があります。本日ご紹介するのはジェイムス・ユール(JAMES YUILL)の"THIS SWEET LOVE"のプリンス・トーマスによるリエディットです。
原曲はアコースティックギターのサウンドと優しく寂しいヴォーカルの柔らかさとハウシーなドライブ感が融合した美しい曲です。好きやでぇ。

こちらがプリンス・トーマスによる"SNEAKY EDIT"。原曲の曲間とアウトロに用いられていたキラキラした音をイントロに持ってきて、イントロをループさせる。音のバランスにも気を使っているようです。

 原曲の雰囲気はほぼそのままに、ともすれば「尺を伸ばしただけ」と言われそうな作りだけど、とてもいい。

 曲の持っている心地よい余韻をより膨らませることに成功していると思います。ループが齎す陶酔とでも申しましょうか、尺を伸ばしたことで曲にどっぷりと浸かれる、そんな気がします。

両方一気に聞き比べるなら国内盤がおすすめ。って1円で売ってるぞ!(2015年9月15日現在)


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